ウォーキングは、今や誰もが意識している健康管理の一つかもしれません。スマホには歩数計測機能がついていますし、モチベーションを維持するために工夫されたアプリもたくさん出ていますから利用している方も多いのではないでしょうか。
ウォーキングは心身のためによいということがたくさん証明されていることは既にご存じでしょう。なによりも、日本人は一日の平均座位時間が世界一長いといわれていますから、とにかく隙間時間を見つけては歩く、そのことがまずは大切です。
さらに!健康の良いことに加えて、働く人にとってウォーキングは、ちょっと工夫を加えることでかなりメリットがあることがわかってきました。それは、「クリエイティブ・ウォーキング」。歩いた後に、頭がクリアになって思考の働きがよくなるような経験をしたことはありませんか?少し工夫をして歩くことで、クリエイティビティを高める後押しをしてくれるのです。まずは、研究の結果を見てみましょう。
note: 起業家兼研究者が考えるクリエイティブ・メンタルマネジメント法 (「メンタルヘルスを改善し、クリエイティビティを高めるウォーキング」)より
● 米スタンフォード大学教育学部のマリリー・オペッツォ博士らは、大学生48名を対象に、座っている状態と(トレッドミル上で)ウォーキングをしている状態で、異なる2つの思考テストを行いました。
1つは、「収束的思考」テストで、1つの最適解を導こうとするタイプ。もう一つは、「拡散的思考」テストで、こちらは新しいアイデアを自由にたくさん生み出そうとするものです。例えば、収束的思考では、「コテージ」、「スイス」、「ケーキ」という3つの英単語に共通する1つの英単語を回答する、拡散的思考では、「レンガ」の新しい使い方に関するアイデアを思いつく限り挙げる、などです。
【結果】
座っている時よりも、ウォーキングしている時の方が、「拡散的思考」が高まることがわかりました。全参加者のうち、80%以上の参加者の拡散的思考が、ウォーキング時に向上したのです(一方、「収束的思考」には変化がありませんでした)。また、ウォーキング中のみならず、ウォーキングの後でも、この拡散的思考力が高まる効果が残っていることもわかりました。
さらなる研究によると、「クリエイティブ・ウォーキング」の効果を高めるには、「いつもと違うコースを、特に目的を決めずに20~30分歩く」ということがポイントのようです。こうなってくると、仕事の合間に歩かない手はありませんね。
いつも同じコースを選ぶほうが何も考えず安心して歩くことができるのでラクかもしれませんが、せっかく歩くのなら、是非、「いつもと違う」コースを心がけましょう。
これは、自由に歩くという感覚運動情報を脳が取り込み、それが自由な発想をするという概念処理につながるからだと考えられています。
「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」(厚生労働省)では、1日8,000歩を目標歩数として推奨しています。このような指針を受けて、各自治体が、自分たちのまちの健康度を高めながら魅力を再発見してもらおうと、独自の「ウォーキング・マップ」なるものを作成しているケースも増えているようです。
また、面白いアプリもあります(『Trail Router』という海外のアプリですが日本でもダウンロード可能です)。このアプリの良い所は、自宅などある出発点から歩きたい(走りたい)一定の距離を選ぶことで、自動でルートを複数作ってくれることです。しかも、各ルートの緑の多さがスコア化されます。最も短い距離で5kmなので、休日などまとまった時間がとれるときに、いろいろなルートを歩く際によさそうです。
私たちは仕事中、限られた注意資源を使っています。歩くこととクリエイティビティの関係でいえば、自然の中を歩くことで減少した注意資源が回復することもわかっていますから、なるべく自然のあるところを選んで歩くことをお勧めします。
また、いくつかの飲料メーカーではウォーキングを販促に活用しています。例えばコカ・コーラ社の『コーク・オン』というアプリは、街にある自販機をホッピングすることで歩数が貯まり、同時にスタンプを溜めてドリンクがもらえる、というものです。クリエイティビティを高めるためには、特に目的を決めずに歩くといい、と紹介しましたが、たまには、ご褒美ルートを作って歩いてみるのもいいかもしれません。
どうやらマンネリはクリエイティビティの対極にあるもののようです。今日から「クリエイティブ・ウォーキング」を習慣にしましょう!