笑いが私たちの健康に良いことが様々な研究で明らかになっています。
例えば、
・日常的に声に出して笑っている人のほうが長生きする
・病院で笑い(落語など)を取り入れることで免疫力が向上する
・作り笑いをしながら漫画を読むとより面白くなる、
など。
そして、健康に良いという背景にはさまざまなメカニズムが働いているわけですが、その根底にあるのはポジティブな感情であると考えられます。
今回のコラムでは、日々のちょっとした心がけや工夫で、私たちがポジティブ感情を経験できる方法をご紹介します。
プレイフルネス(Playfulness)とは、ユーモアや余興を用いてその場を作る、あるいは、場の雰囲気を作り直すことを指します。例えば、重苦しい会議の席でちょっとした笑いで場を和ませる、そんな人はプレイフルな人だといえるでしょう。
ポジティブ心理学では、大人のプレイフルネスは大切な個性の一つであると同時に、ちょっとした工夫で鍛えることが可能だと考えられます。そして、プレイフルネスはウェルビーイングに関連することが多くの研究でわかってきています。
では、あなたが最近プレイフルになったときはいつでしょうか?その時の気持ちや様子を思い出せますか?
子どもの頃は、日常の些細なことが新しい発見であり、型にはまらない捉え方や発想をすることができます。例えば、お絵描きをするとき、空は青ではなく真っ赤でもいいですし、道端に咲く花はレインボーカラーでも構わないわけです。しかし、残念なことに、大人になるにつれて、規範や常識などに囚われて、プレイフルネスが鳴りを潜めていく……。多くの人がそうなのではないでしょうか。
そこで、Three Funny Things(3つの面白いこと)をご紹介しましょう。これは、日々生活する中で、「面白いこと」を見つける、あるいは見方を変えて見つけ出すことでポジティブ感情を高めるエクササイズです。
<方法>
- その日あなたが見聞きした面白いことやあなたの面白い行動を3つ書き出し、それらによって、どのような気持ちになったかを考える
- 可能であれば、それらの面白いことがなぜ起きたのかも考える(理由は無理に見つけなくてもよい)
- 毎日10分程度かけて、1週間続ける(寝る前などの時間に実施すると続けやすい)
スイスのチューリッヒ大学の研究では、Three Funny Thingsを1週間実施した効果を、他のポジティブ心理学の介入方法と比較した結果、Three Funny Thingsを1週間実施したグループは、幸福度が高まる効果が6カ月持続し、抑うつ症状が低減する効果が確認されました。
では、面白いことを書き出すとはどういう感じでしょうか。
例えば、
・クルマが来ないのを確認したかのように絶好のタイミングで道路を渡った猫を見た
(必死な感じが伝わってきてワクワクした)
・近所のカフェで開催された落語イベントに参加した
(みんなにつられて大笑い。思い出しても笑える)
・夕飯に子どもと一緒に餃子を200個作った。初めは笑顔で、そのうちお互い怖い顔に
(もはやマインドフルネスに近い境地。集中したのか最後はすっきりした気分に)
場面や、登場人物、具体的な言葉などをできるだけ詳しく書くのがポイントです。
個人的な印象としては、面白いことを意識して過ごすこと自体、物ごとに対するポジティブな見方が芽生え、心が大らかになる気がします。そして、面白いことを意図的に見つけて分析することが、小さな気づきに繋がって、ちょっとしたクリエイティビティを生みます。
ぜひ自分の中のプレイフルネスを積極的に見つけて、ポジティブ感情が増えていくことを体感してみてください。
参考文献:
Gander, F., Proyer, R. T., Ruch, W., & Wyss, T. (2013). Strength-based positive interventions: Further evidence for their potential in enhancing well-being and alleviating depression. Journal of happiness studies, 14, 1241-1259.
https://ggia.berkeley.edu/practice/three_funny_things